そして、叔父さんのいる病院へ。やはり透析後でとても疲れきっている表情だった。
「サア、ウチへ帰りましょう」
と私は叔父さんを抱えて、車の助手席に乗せた。そしてそのままカミさんの実家へ。
到着し、叔父さんの部屋へ連れて行き、
「お疲れでしたね。さあ休みましょう。この寝巻きに着替え・・・」
といい終わらないうちに、叔父さんは、なんと、
「葬儀場へ連れてってくれ!」と言い出したのだ。
えっ、私は耳を疑った。だって車の中であんなに疲れきっていたのに・・・
「本当に、本当に行くの?本当ですか??」 私は何度も聞きかえした。
叔父さんは首を縦に振るばかり。
『自分の母親の葬儀に行きたいという気持ちを、誰が引き止められようか・・・!!』
私は、親父さんに怒られるのを覚悟で、
「分かりました。マモちゃん、礼服とかはどこにあります?」
と聞いた。
叔父さんは、箪笥の中から礼服とワイシャツと黒ネクタイを取り出すところまでは出来たが、体が思うように動かず、全く着替える事が出来なかったのだ。
私は叔父さんのワイシャツを着せ、ネクタイも礼服も着せた。そして15分くらいかかって、やっと支度が終わった。
「サァ、行きましょう!」
私は叔父さんを抱えて、車に乗せ、急いで葬儀場へ向かった。
葬儀場へ到着した。もう既にお骨拾いも終わっており、参列者も帰りかかっていた頃だった。
私は叔父さんを車から抱えて降ろそうとしようとした時、なんと、叔父さんは自力でスっと車から降り、そのまま参列者のいる方へスタスタと歩いていき、
「本日はお忙しい中良く来てくださいました」
と挨拶回りしていたのである。
その振る舞いは、とても透析で疲れきっているというのを微塵にも見せないものだった。
私はビックリするやら、感動するやら、なんとも言えない気持ちで一杯になっていた。
その後すぐ、私は親父さんに
「勝手に連れてきてしまい、申し訳ありませんでした。でもこのマモちゃんが行きたいって言ったのです。この気持ち、誰にも止められないですよ」
と言った。
親父さんは、目を真っ赤にしながら、ただただ黙って頷くだけだった。
現在、叔父さんがいた部屋は、甥っ子の遊び部屋&寝室になっている。
随分と部屋の雰囲気や風貌は変わってしまったが、私はあの部屋に入ると、あの時の記憶が昨日の事のようによみがえり、胸が熱くなるのである。